勉強会報告

【第三期】第4回勉強会 2018年9月27日【松山淳氏 ・白石徳行氏】

松山淳 白石徳行

2018年11月27日。

第三期の最終回である、第4回ビューティ・ビジネス・コンプライアンス勉強会(BBCA)が開催された。
講義に入る前には主催・代表幹事の佐々木広行より挨拶があり、今期最後を迎える勉強会の意義を改めて確認。

佐々木広行
その後、第一講義を行っていただく松山淳氏にマイクが渡された。

第一講義「加齢制御と再生医療の実際」

松山淳

グランプロクリニック銀座 松山淳 理事長

profile:
杏林大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学医学部病理学教室助手・医学部付属厚生女子学院(現:慶應義塾大学看護医療学部)講師、国立病院臨床研究部病理室長などを経て、米国抗老化医学研究所・クリニックにて研修。現在、日本人初のアンチエイジングスペシャリストとして、米国アテナクリニックインターナショナル抗老化部門部長および日本の複数の抗老化医療研究所、クリニックの顧問医を務める。2018年11月にはグランプロクリニック銀座の理事長に就任した。

100年以上続く「松山医院」に生まれた松山淳氏は、現在も群馬県にある松山医院で第15代目の院長、また、グランプロクリニック銀座では理事長を務めている。
アンチエイジングのスペシャリストであり、日本の第一人者でもある松山淳氏は、講義の冒頭で長年続く松山医院の歴史について写真を交えながら紹介してくれた。

松山家には代々受け継がれる家訓がある。

“全ての患者を診る”
“広く公の医療に貢献”
“医術の得意科で主席となる”

続けて、アンチエイジング医療との出会いを語ってくれた。

「アンチエイジングとの出会いは1997年。内面から若返るという、まさに私が理想としていた医学でした。帰国後、アメリカで学んだアンチエイジング医学を日本に紹介したのですが、マスコミや大学教授にたたかれましたね。『アンチエイジングはあり得ない』『おバカな医師がいる』『若返るなんてない』など」。

アンチエイジングと出会ったアメリカでは、アンチエイジングは外見だけでなく、内側からも若さを得るものだと受け入れられており、健康維持にもつながる医学であった。
その影響を受けた松山淳氏は、常に「外見と内面は変えることが可能。特に、内面から変える『内面美容』はとても重要である」という考え方を大切にしているという。

つまり、外見の美しさは内面からもつくっていくということなのだ。

現在では、国内だけでなく海外からも講演依頼が多く、1万人規模の学会で講演することも。講演ではアンチエイジングの重要性を発信している。

アンチエイジング医学とは、積極的予防医学である。
その範囲は、一般診療科目をはじめ、運動生理学/スポーツ学、栄養学、東洋医学、美容外科、美容皮膚科、美容内科、エステ、アロマ、ハーブ、分子整合栄養学、代替補完医学、中毒学(デトックス、キレーション)、酵素/腸内フローラ、遅延型アレルギー、遺伝子レベル、エピジェネティック、ホルモンバランス、再生医療など、多岐にわたっている。

“老化は治療できる疾患である”

老化の過程を慢性の炎症や代謝不全、消耗性疾患として捉え、症状や問題点を把握して診断。
不利益に対して治療を行う。あるいは、将来のリスクを予防する。それが、アンチエイジング医学の定義とされていると、松山淳氏は述べた。

「アンチエイジングとは、加齢によって生じるマイナス面である老化現象に対して抵抗し、それを克服することです。すなわち抗老化。年齢を重ねること自体は悪いことではなく、自然の摂理ですから。私はその老化に対して挑戦を続けています」。

日本は世界的な長寿国であり、平均寿命も年々高くなっている。
けれども、健康寿命はそれより10年ほど短い。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと。

アンチエイジング医学には、その問題を解決する可能性があるのだ。

「寿命と健康寿命にそれだけ差があるということは、つまり10年間は寝たきりということ。また、そのことに介護医療費などがかかっているというのが現状です。従来の『早期発見』、『早期治療』というのは病気にすでになっているということが前提。しかし、私たちの考えるアンチエイジングとは、病気にならないためのリスクマネージメントという考え方なのです」。

米国アンチエイジング医学会(A4M)の
The Three Rules of Anti-Aging Medicine(アンチエイジング医学の3原則)
・Don’t get sick. (病気にならない)
・Don’t get old. (歳をとらない)
・Don’t die. (死なない)

その後、松山淳氏から、最先端のアンチエイジング治療や再生医療についての紹介があった。
日本では馴染みのない技術や考え方、研究など、驚きの連続。参加者は興味津々に話を聞き入っていた。特に、再生医療は、今後の医療の可能性を感じさせられる内容だったといえる。

再生医療として高い可能性をもつ幹細胞治療。
幹細胞とは、様々な組織に分化することができる細胞のこと。幹細胞自身はゆっくり自分を増殖し、ある一定の数の細胞は維持する。この数が減少によって老化が起こるのである。

「幹細胞治療を積極的に活用すれば様々な病気を治すことが可能ですし、若返りにもつながります。実際に海外ではそういう風潮になっているのです。一方、日本ではiPS細胞やES細胞などに比重を置きすぎている気がします。当然その研究も必要ですが、早く新しい選択肢を求めている人のためにも、『体性幹細胞』という幹細胞を利用していくことがとても重要です」。

体性幹細胞とは、様々な生体組織に存在して再生や修復を担っている。神経幹細胞や間葉系幹細胞、造血幹細胞など種類は複数。特定の機能をもった細胞にのみ分化するのが特徴だ。人工的につくられるiPS細胞やES細胞はほぼすべての細胞に分化できる「多機能細胞」。それとは異なり、体性幹細胞は人間が元々もっている細胞のため、安全性は高いのである。

2018年11月にオープンした「グランプロクリニック銀座」では理事長を務めている松山淳氏。

グランプロクリニック銀座では、「人類の健康寿命の延伸に貢献すること」を基本理念に、栄養療法(インナービューティ)・アンチエイジング・外面美容という3つの領域で、最先端技術を導入した高品質の医療サービスを提供している。

「内面からの美容を実現するクリニックです。さらに、内面だけではなく外面からの治療も提供。たとえば、レーザー治療など。つまり、体の内側・外側の両面からのアプローチです。最先端の医療によって体内年齢を調べて、それに応じた治療を行っていきます」。

銀座では、美容外科以外のクリニックを運営することが難しいといわれている。しかし、松山淳氏は間違いなく成功すると熱く語った。

最後に、再生医療は加齢制御や美容改善、疾病治療、機能回復に対して、様々なレベルから貢献できる可能性を秘めた治療であると改めて述べた。
第一講義の終盤では、幹細胞治療や、幹細胞を使用した化粧品に関しての議論で白熱。
また、医療とエステサロンの連携の重要性などを確認し合い、第一講義は締めくくられた。

第二講義 サービスの流通創造で顧客満足を追求

白石徳生

株式会社ベネフィット・ワン 白石徳生 代表取締役社長

profile:
1967年東京に生まれる。両親をはじめ、親戚も自身で事業を興していた環境で育ち、小さいころから起業を志すようになる。大学卒業後は就職せず、ビジネスのヒントを探すために単身アメリカへ。帰国後は、車用品のセキュリティビジネスを立ち上げるも本格的な事業化を前に撤退。その後、株式会社パソナジャパン(現:ランスタッド株式会社)へ入社する。28歳の時に資本金上限1億円の社内ベンチャーコンテストで一位となり、1996年には株式会社ビジネススコープ(現:株式会社ベネフィット・ワン)を設立。2004年にJASDAQ上場、2006年に東証二部、2018年には東証一部上場を果たす。

現在会員数750万人を超え、主力の福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」事業で培ったビジネスモデルを強みに、『サービスの流通創造』に向けて日々挑戦を続ける、株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長 白石徳生氏

『サービスの流通創造』で顧客満足を追求するベネフィット・ワンのビジネスモデル」をテーマに、経営ビジョンをはじめ、独自のビジネスモデル、展開する事業・サービスの価値化、働き方改革についてのビジョンなどをご講義いただいた。

 白石 徳生

冒頭では、自身の20代を振り返り、株式会社ベネフィット・ワンの創業から現在に至るまでの数々のエピソードを紹介。
参加者はメモを取りながら、時には笑いが起こることも。

「弊社に対して、福利厚生のアウトソーシング事業を専門に行う会社というイメージを持たれている方がいるかもしれませんが、実は元々、その事業をやろうと思って始めたわけではありません。別の目的があり、それを実現するための一つの手段でした」。

白石徳生氏は、学生時代から将来は起業したいという想いを強くもっていた。

それと同時に、会社をつくるのであれば、『世界的に有名な大企業をつくりたい』という想いもあった。どうしたら大きな会社をつくれるのか、そのヒントを得るために様々な人に質問をしたという。

ある時、「大企業をつくるための秘訣はなんですか?」と尋ねると、シンプルな答えが返ってきた。
「大きな会社をつくりたいのであれば、大きなマーケットで勝負しろ。たとえば、100億円規模のマーケットなら100億円以上の会社は生まれない」。

それを教わったことを今でも覚えていると話した。

「多くの人に必要とされるサービスは、それだけ大きなマーケットがある。つまり、そのサービスを提供すれば、会社も大きくなるのです。それは何なのかとずっと考えましたね」。

20代は人材会社である株式会社パソナジャパンで営業をしながら、そのニーズを探す日々が続いた。そして、2つのマーケットに気づいたのだ。

白石徳生

「まずは、サービス業界には流通がないということ。それをつくればすごいマーケットになるのかもしれないと考えました。もう一つはインターネット業界です。当時は、インターネットが世の中にデビューした時期で、様々な企業がその領域に参入し始めており、これから成長するマーケットだと思いました」。

白石徳生氏は、その2つの要素である“インターネット”と“サービス業”を掛け合わせ、インターネットを使ってサービスを売る会社をつくれば巨大なマーケットになると確信したという。そこで誕生したのが株式会社ビジネススコープ(現:株式会社ベネフィット・ワン)。パソナグループの社内ベンチャーコンテストで一位になったことをきっかけに、29歳の時に設立したのだ。

株式会社ベネフィット・ワンの特長は、1万円のサービスを1万円で売るというビジネスモデル。
利益は出ないが、その代わり、ユーザーから会費をいただくというもの。月額は400円である。

白石徳生

「弊社ではサプライヤーから広告料や手数料をいただきません。ユーザーに会費を払っていただくことで、何度でも利用することが可能な定額課金モデルを展開しています。その理由は、ユーザーから会費をいただくということは、お客様になるのはユーザー。すると、サプライヤーに遠慮することなく、ユーザーの立場でサービスの評価や格付けができるのです」。

また、サービス業に流通をつくることのニーズは大きい。

なぜなら、サービス業にはサービス自体を比較・検討する手段がなかったのだ。
広告料に比例して高いシェアを得られる業界であるため、本当に良いサービスが選ばれないというジレンマがあった。

流通をつくることでその問題が解決できると白石徳生氏は考えたという。
ユーザーが求めるサービス内容と価格のバランスが最も優れた商品を買うという、当たり前のことを可能にするため、「流通」の概念をサービス業に持ち込んだ。

「美容業界においても、シェアを上げるための手段として広告やブランディングに偏りがちの会社が多い。それももちろん大切なのですが、流通をしっかりと整備できれば、ユーザーにとって魅力あるサービスを提供している会社が、業界内でさらに成長していくと思います」。

このようなビジネスモデルなら間違いなく勝てると、創業当時から確信していたという。

2004年からは事業を多角化し、現在では11の事業を展開。人事領域にビッグデータを活用する仕組みの提供や、サービス業界における在庫情報のIT化の導入などを積極的に進めている。

「在庫情報のIT化でいえば、インターネットでサービスを販売するには、予約という機能を備えていなければサービスの販売は難しい。そのために、在庫情報のIT化という“インターネットとつながる”ことが必要だったのです」。

美容業界における在庫情報のIT化に関しても。

「美容業界ではまだ完全なIT化はできていないが、オンラインで予約できるお店も増えていますし、業界全体でのIT化は急速に進んでいると実感しています」。

サービス業は、空間と時間軸でのサービス提供が基本だが、そのニーズは偏る傾向にある。
そこで必要とされるのが、需要と供給のバランスに応じた価格変動システム。

そのためにもIT化は大前提であり、ニーズによって価格が変動することで、経営効率の向上につながるのだ。

白石徳生

「インターネット上でサービスを在庫管理することで、サービス業界全体の最適化を実現できると考えています」。

これから変化するであろう新しい時代の価値観に対応し、経営を再構築することの重要性を語って講義は終了。
参加者からは大きな拍手が送られた。

講義が終わってからは、白石徳生氏に質問をするための列ができ、なかなか懇親会を始められない場面も。

懇親会には白石徳生氏もご参加。
参加者一人ひとりが講義の感想や疑問点を発表し、これからの働き方や人材確保、デジタル化の導入、美容業界としての可能性などを改めて考える場となった。

最後に、特別顧問である株式会社損得舎 代表取締役 佐藤尊徳から今回の総括があり、来年2019年の第4期に向けて、全4回行われた第3期は幕を閉じた。

佐藤尊徳

参加者

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