勉強会報告

BBCA第四期 第3回 2019年8月6日 【杉本宏之 氏】

杉本宏之氏

ビューティ・ビジネス・コンプライアンス勉強会(BBCA)第四期の第3回目が、2019年8月6日に開催された。講義に先立って主催・代表幹事の佐々木広行からの挨拶があり、その後、杉本宏之氏のご紹介と続いた。

佐々木広行

杉本宏之氏は、業界において最短・最年少で株式上場を成し遂げる一方で、自己破産や民事再生など、多くの苦労を経験。しかし、その後そこから復活を遂げました。今回の講義では、杉本宏之氏から「動じない経営」をテーマに、経営者としての考え方や企業理念、成長ビジョン、社員育成などを語っていただいた。

講義「動じない経営」

株式会社シーラホールディングス 取締役会長 杉本 宏之 氏

profile:
1977年生まれ。高校卒業後、1997年に住宅販売会社である株式会社東光マンションセンターへ入社。22歳でトップ営業担当者となる。2001年には24歳で独立し、株式会社エスグラントコーポレーションを設立。デザイナーズワンルームマンションの開発を皮切りに事業を拡大していき、総合不動産企業へと成長させる。2005年、不動産業界では史上最年少での上場を果たし事業をさらに拡大したが、2008年のリーマンショックの影響で急激に業績が悪化。2009年に191億円もの負債を抱えて民事再生へ。その後、再起を図り、2010年に不動産の売買・賃貸・管理及び仲介・マンション開発等を事業とする株式会社シーラホールディングス(旧:株式会社SYホールディング)を設立。現在ではグループ7社を展開し、売上高200億円を超えるまでに成長している。

「幼い頃は苦労することも多かったですが、だからこそ、そこから一念発起できましたね」と話す杉本宏之氏は、高校卒業後に専門学校で宅建の資格を取得し、不動産業界へ。そこで我武者羅に働き、最年少で管理職に抜擢された。

「24歳でした。けれども一方では、自分で想い描いたマンションを創ってみたいという気持ちがとても強く、独立してみたいと考えるようになりました」。

営業成績も3年連続トップで、年収も2000万円を超えていた。また、会社に対する想いや、日々の成長と実感できる環境から、なかなかその一歩が踏み出せなかったという。

そこで背中を押してくれたのが、9.11アメリカ同時多発テロだった。
「ちょうどその時にアメリカにいて、もし自分が巻き込まれていたらと考えました。改めて人生の儚さを実感しましたし、今すぐに行動しなければならないということに気づきました」。

ついに2001年、「自分のやりたいことをやろう」という想いで、エスグラントコーポレーションを創業した。

独自のワンルームマンションなど、描いていた事業をいくつも展開し、わずか3年で売上高179億円と会社は急成長を遂げた。
「2005年には業界最短の48ヶ月で上場しましたが、そこからは急転直下。2008年のリーマンショックが大きかったです。ピーク時は400億円の負債を抱えましたね」。

そして2009年には民事再生。31歳の時だった。
「本当に多くの方々にご迷惑をおかけました。私にとって人生最大の挫折です。それでも周りには応援してくれる味方もいました。彼らがいなかったら再起できなかったと思います。だからこそもう一度、立ち上がりたい。必ずチャンスを掴むという強い気持ちで行動しました」。

もう失敗はしないと覚悟を決め、2009年に株式会社シーラホールディングス(旧:株式会社SYホールディング)を創業
「今感じているのは、会社経営って結局は“人”です。苦労した時期もそうですが、人のつながりがあってビジネスは成り立っていますからね。民事再生の時は特に感じました」。

そこからの教訓で生まれたのが、この経営哲学である。

経営哲学
基本理念:
会社は家であり、社員は家族である
経営理念:
自分達が欲しいマンションを創る
企業理念:
安心と愛と感動で世紀を超えて永続する

「自分の責任であのような事態を招いてしまったので、その反省もあります。だからこそ、お客様だけでなく社員一人ひとりとしっかり向き合うようになりました。本当に人ですね。愛と感動。人を笑顔にする経営を目指しています」。

『自分たちが欲しいマンションを創る』ということをモットーに、不動産の売買をはじめ、賃貸、管理及び仲介。特に、需要の高い都心部におけるワンルームマンションの開発・販売が強みである。他にも、ベンチャー投資や飲食店経営なども事業展開している。

杉本宏之氏が掲げるビジネス戦略はこちらだ。

大家業
・自社保有賃貸物件による岩盤収益の積上げ
・管理戸数の積上げによる岩盤収益の積上げ

デベロッパー
・都心16区に絞り込んだ、単身者・DINKS向け1Rマンションの開発・分譲
・単身シニア向け住宅

不動産テック
・アプリを活用した小口不動産の販売
・最先端のIoT導入により、マンションをより便利に

不動産ベンチャーに特化した投資・育成
・金融・仕入れをセットしたアクセラレーターとしての役割
・スタートアップの育成に限定し、投資効率UP

「とにかく買った物件は売らないようにし、ずっと物件を買い続けています。家賃収入・管理費で、社員の給料全額を払えますね。明日、来月の売上をつくることを考え過ぎると、営業戦術ばかりに注力してしまい会社の経営が左右される。そうではなく、『とにかくお客様のためにいいものを探してこい、お客様のためにいいものを提供してこい』と、売上よりも優先するべきことは何か考えるよう社員に伝えています」。

経営方針

総合トップは目指さない。ニッチトップを目指す。
ワンルーム、単身者向け住宅、単身シニア向け住宅、18~30平米のホステルなど特徴のある市場を開拓する。

烏合の衆は負ける。少数精鋭で勝つ。
理念やビジョンを共有できていない社員が増えても、長期的に見るとリスクを拡大するだけである。

人が減る土地に投資はしない。人が増える土地に投資をする。
インターネット産業もそうだが、マーケットで評価されているのは需要が増えているから。不動産開発も同じであり人口動態は重要な指標である。

相場は裏切るが、家賃は裏切らない。
開発のボラティリティは高い。リーマンショックの時、開発の利益は1年間ゼロになった。ストック事業で利益を出せる体質。

経営判断に妥協はあるがモノづくりに妥協はない。
理想を振りかざすだけでは経営は成り立たない。時に利益を追う判断があっても良い。ただしそれはお客様の為になるサービスであり、お客様の幸せの為に物作りをしている事が前提となる。

大手に負けないぐらいの強みを大切にする杉本宏之氏。ゼネラリストではなくスペシャリストを目指すことが会社の成長には必要なのだという。

「理想を振りかざすだけでは経営は上手くいきません。バランスがすごく大切なのです。時に妥協することだってある。ただ、モノづくりやお客様へのサービスに関しては、妥協することがあってはなりません。やれることは徹底的にやり続けるだけです。」。

「また、物件を創るときには『迷ったらお金をかけろ』を合言葉にしています。たとえば、8万円のワンルームであっても、ホテルのゲストルームのような、他社が真似できないことを追求しています。」

入居率はほぼ100%。このようなワンルームをつくっている会社はない。それをただひたすらに追求し、そして、信念を持ち続けた結果、ブランドとして認められたのだ。

杉本宏之氏が今までの経験を通じて学んだことを社員に向けて発信しているミッションステートメントを紹介する。社員が同じビジョンを共有し、共に成長していけるよう一つひとつに想いのある内容となっている。

ミッションステートメント

日々学び、日々成長

1日何か1つでもいい。成長しよう。その積み重ねが僕達の明日を創る。
プロの知識と一流のサービス精神:
僕達はプロだ。 圧倒的な知識と一流のサービス精神でお客様に感動して頂こう。

やるなら今

時間は戻らない。誰よりも早くどの会社よりも早くやろう。
ポジティブに行動する:
僕達に関わる全ての人々が笑顔であふれるように、いつもポジティブに、日本のムードメーカーになろう。

嘘をつかない

将来の夢を語るのに、少し大袈裟でもいい、情熱的に熱く語ろう。でも嘘をつく事だけは許されない。

無駄なコストは削減

無駄な贅肉が人間の健康に良くないように無駄なコストは会社の健康を蝕む。見た目(売上、利益)も内臓(財務)も健康を心がけよう。

クリエイティブの追求

僕達はマンションを創っている。これは地図に残る偉大な仕事だ。僕達の生み出したクリエイティブを地図に残し、人へ街へ想いを伝えよう。

謙虚さ、感謝、誇りを胸に

僕達はお客様に支えられている。そして多くの仲間と取引先に支えられている。謙虚さ感謝、その想いはやがて誇りになる。

ルールは守る為にある

スポーツならルールを破れば簡単に勝てる。ビジネスならルールを破れば莫大な利益が出せる。でも勝てなくても、利益を出せなくても、僕達はルールを守ろう。

一人一人がシーラ

僕達は歯車ではない。兵隊でもロボットでもない。僕達は自ら考え、自ら行動し、シーラを体現する。

他者への想像力

お客様、お取引先、シーラの仲間達、相手が何を考え、何を望んでいるかを考え抜こう。それが仕事の原点だ。

答えは現場にある

迷った時は現場でガムシャラに働こう。時に失敗して涙を流しても良い。挑戦を止めず、地道な努力を続けるその先に、必ず答えがあるのだから。

素直に気持ちを伝える

黙っていては伝わらないことがある。僕達は伝えることの重要性をしっかりと理解している。僕達は愛を込めて必ず伝える。

理想を実現するために

仕事は綺麗事だけでは何も始まらない。しかし、綺麗事を言うのが理想実現の始まりだ。

約束は守る

僕達は、どんな小さな約束も必ず守る。信用と会社の成長は比例して積み上がることを知っている。

仲間を信じる

人は1人では出来ない事が沢山ある。でもみんなとなら出来る事が沢山ある。仲間を信じ、チームシーラで勝利しよう。

未来は変えられる

過去は変えられないが、未来は変えられる。そして新しい未来が過去の評価さえも変える。進もう。僕達には未来を変える力がある。

講義最後の質疑応答では、経営論や社員育成など、参加者からは多くの質問が飛び交っていた。業界は違えど、経営者としてのさらなる成長の可能性を、お互いに意見をぶつけて確かめ合っているようであった。



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