勉強会報告

【第一期】第1回勉強会 2015年9月24日【長田 浩志氏 】

長田 浩志

2015年9月24日、記念すべき第1回ビューティ・ビジネス・コンプライアンス勉強会(BBCA)が六本木ヒルズ51階にて開催された。

当日はあいにくの雨模様となったが、勉強会開始時間5分前にはほぼ全参加者が揃う出だしとなり、本会へ対する期待はもちろんコンプライアンス修得に向けた経営者陣の意欲を感じられた。
冒頭にBBCA事務局の佐々木広行(株式会社エステプロ・ラボ代表)からBBCA設立趣旨について

佐々木広行

ここ1,2年で医薬品医療機器法(旧薬事法)などの改正、健康食品における機能性表示食品制度の導入など、行政の情報が目まぐるしく変化しています。
私たちはこれらの情報に対して、常に最新の情報を取得していかねばなりません。
『知らない』では済まされないものであるからこそ、自社のみならず業界として必要なパイプや人脈を広げ、コンプライアンスを学び情報共有していく場が必要です。
ビューティ・ビジネス・コンプライアンス勉強会(BBCA)はまさにそのための私的な勉強会で、プライベートな形ではありますが、業界発展に少しでも貢献できればと考えております。」

と述べた。

また経済関連のビジネス誌で様々な人脈を築いた経験を持つ特別顧問の佐藤尊徳氏からは

佐藤尊徳氏

エステ業界は玉石混合ともいわれています。
だからこそ、経済人、官僚(役人)、政治家など多方面から最新の知識を学んでいただき業界向上に役立ていただきたい。
本勉強会では初代消費者庁長官でもあり、女性の目線をお持ちの野田聖子代議士にもお手伝いいただき、美容業界全般が世間にも認められるものに発展するように一緒に頑張っていければと思います」

との話があった。

厚生労働省健康局生活衛生課 課長 長田 浩志氏

長田 浩志氏

厚生労働省の長田氏からは「美容関連事業と関連する法制度について」詳しく説明があった。

長田氏の所属する生活衛生課では飲食業、理容業、美容業、旅館業など「不特定多数の人がサービスを受けるもの全般」を管轄している。
うちエステティック業界については全体を包括する法律は存在せず、そのため既存の関連法律に抵触しないこと、また自律によって信頼を得ることが重要であると述べる。

また2015年6月頃の国会答弁では、美容師法と理容師法の定義について話題になった。美容とは容姿を美しくすること、理容とは容姿を整えることと定めた1970年代の通知が現状とかけ離れてしまったために現在見直しを行っているという。

この美容師法と関連して問題になることが多いものがまつ毛エクステンションだ。
2015年現在、まつ毛エクステンションは首から上の容姿を美しくする行為のため美容師免許を有した資格者が提供できるサービスとなっている。

だがそれでもまつ毛エクステンションに関連する危害報告は多く、独立行政法人国民生活センターなどには多数の相談が来ており、2010年度から2014年度末までに全国消費生活情報ネットワークシステムに寄せられた危害情報は約600件にも及ぶという。

これを受け厚生労働省では、数度に渡って「まつ毛エクステンションによる危害防止の徹底について」等の通知を出しているが、現状に至るまで根本解決はされていない状態だ。

その他、美容関連事業者が留意すべき法律として医師法やあん摩マッサージ指圧、はり、きゅう師法及び柔道整復師法などの資格が必要な法律を挙げる

また衛生面では労働安全衛生法、消防法、公衆浴場法、さらに消費者保護の観点では景品表示法、健康増進法、医薬品医療機器法(旧薬事法)、特定商取引法等を挙げる。
美容関連事業者全体を統括する法律がないからこそ、サービスに応じた環境を整備し関連法規にしっかりと目を向ける必要があると長田氏は述べた。

これに対し参加者からは以下のような質問があり、長田氏が回答を行っている。

長田 浩志氏

Q:「法律に抵触するかどうかを相談できる行政の窓口はないのか?」

A:美容師法の場合は都道府県単位が管轄のためそこに相談するのがよい。また市・区単位で保健所がある場合にはこちらが担当になっている。
また経済産業省に文書・書面で照会を行う事も可能だが、手続きも煩雑で大がかりなものになるので、一般的には役所や保健所へ問い合わせるのがよいだろう。

 

Q:エステティシャンの国家資格は今後できないか?またない場合、企業側から働きかけることは可能なのか?」

A:資格の導入は、業界にとって本当によいか迷う点もあるため案段は難しいところだ。
業界の質向上に繋がるのであればと思うものの、自由な活動が規制される可能性もあり、また消費者保護の観点から妥当性があるかも鑑みないといけない。
またエステティシャンの場合、人の身体に触れるサービスのため、医師法など既存法律、既存資格との棲み分けを明確にしないといけない点もある

後藤氏

Q:「まつ毛エクステンションは専門学校など学ぶ場がない。問題が多いからこそ国家資格を導入して敷居を高くすることはできないのか?」

A:先ほどお話した美容師・理容師法においては、資格を取ったものの昨今の現場に即してないもの、また実務にそぐわない内容なども散見されるため既に規制改革の動きが出ている。
早ければ2015年中には養成内容の見直し等を行う予定だ。まつ毛エクステンションについてはまだ資格はないが、今回の美容師・理容師法同様に課題を認識し議論をしていきたい。

 

Q:「まつ毛エクステンション、エステ、アロマなどトータルビューティを提供しているが、規制によっては内容が多少異なっているものもあり、どの規制を一番重視すべきか悩んでいる」

A:法律に則った具体的な運営については各自治体判断になっており、それぞれの自治体によって規制のレベルも多少変わっている。法律と異なる場合には国から指摘するが、そうでない場合には基本は自治体判断となる。とはいえ、万が一埒が明かないなどあれば相談してほしい。

 

Q:「経済産業省は美容は世界へ発信できるビジネスと理解してくれていると感じるが、厚生労働省としてエステティック業界へ対する見方はどうなのか?もちろん規律を守ることが前提だが、国の成長産業という位置づけを認めてくれるような雰囲気はあるのだろうか。」

A:各省庁で立場、視点は異なるものの「国民の利益確保」が一番の目的だ。エステティック業界が成長業界であり国民にも求められているサービスであるという認識はもちろんあるし、当然否定もしない。しかし安全の観点からどう担保してくれるのかと言う点は留意すべきで、かといって国から過剰な規制はしたくないところでもあるため、可能なら自主規制を設けて業界内で上手に運用してほしい。
ただしまつ毛エクステンションのように危害報告や問題が多いようであれば、国民の安全を守れないという理由で規制を入れざるを得ない。

 

Q:「産業分類にエステティックが入ったと決まったが、厚生労働省としてはエステティック業界への見方はいかがでしょうか」

A:先ほどと同様で、国民が求めている者と言う認識はある。ただし規制を業界で敷いていただくことが重要だと考えている。

懇親会では、特別ゲストの野田氏を交え、参加者達が業界の今後についてやビジネスについて熱く話し合った。

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