勉強会報告

【第二期】第1回勉強会 2016年11月11日【佐藤 尊徳氏 ・野田 聖子氏】

佐藤 尊徳氏 ・野田 聖子氏

2015年9月から2016年7月にかけて開催された第一期ビューティ・ビジネス・コンプライアンス勉強会(BBCA)が終了して4カ月。
満を持して、2016年11月11日にグランドハイアット東京にて二期目となるBBCAが開催された。

1回目となる今回は、冒頭の挨拶で事務局の佐々木広行が、前期の振り返りとあわせて今期の目標について述べた。

佐々木広行

「第一期は、野田先生にご講義いただき、また佐藤尊徳先生には特別顧問としてご参加いただき、政治の中枢へBBCAの業界へ対する前向きな取り組みを伝えることを目的に開催されました。
4回の勉強会では、厚生労働省や消費者庁の方にご講演をいただくと同時に、我々の取り組みや現場の課題、改善点について等を直接質問させていただきました。
また野田先生に関しましては、ご多忙の中、6月に大阪で開催されたエステティックグランプリにご出席いただき、参加者に対して貴重なメッセージまで頂くことができました。
第二期勉強会でも引き続き、美容業界を正しい方向に発展できるように更なる意見交換ができればと考えています。」

講義「昭和を作ってきた偉人たちの軌跡」株式会社損得舎 代表取締役 佐藤 尊徳氏

二期目の初回となる今回は、当勉強会の特別顧問であり、財界人や企業人とも多くの人脈を持つ株式会社損得舎の代表、佐藤 尊徳氏から講義をいただいた。

佐藤尊徳

人の上に立つには「想い」が必要であることについて、今回は特に、自身の生い立ちや現在に至るまでの思考・価値観についてなども初めて詳細を語ってくださった。

尊徳氏は小学生時代から「社会を変えたい」という想いをもっており、「持って生まれたものがその人のすべてではなく、アクションを起こすことで状況は変わる」とずっと思い続けていたという。

そしてこの精神は現在に至るまで自身の根底に流れており、いつも誰に対しても同じ態度でいること、そして信念をもって話し続けることで、様々な人脈や仲間を作って来られた。
大学卒業後に入社した会社では、経済誌の創業オーナーの秘書として日々仕事をしてきたが、その際には3つのことを学んだという。

一つ目は「感性を磨く」
出版社勤務時代は、映画を毎週数本見たり、落語や絵画など美術に触れたりとにかく様々な一流と言われるものに触れたという。また様々な異業種の人間と触れることで新しい感性を磨き幅広い業界情報を得たことが現在の仕事にも役立っているそうだ。

二つ目は「時間厳守・小さな約束こそ守れ」
当時秘書を務めた社長は時間に厳しく、打ち合わせの際には30分前には打ち合わせ先のビル下に到着していたという。待ち合わせの時間に限らず、約束なども同様で、小さなことや身近なことこそきちんと守る精神が大切だ。

そして三つ目は「Give&Give&Takeの精神」だ。
目上の方とお付き合いする際には取引をすることだけがゴールではない。相手の懐に入ったり、相手が気持ち良いと思うことをするなど、「相手が喜ぶこと」を提供することが大切だ。

と話した。

この発想はどの業界にも通じ、サービスを与えることが苦痛になってはいけない。お客様が喜ぶことを提供して、自身も嬉しいと感じるこの気持ちであるという。

その他、経営の神様 松下幸之助氏の知恵や昭和の参謀瀬島龍三氏の知恵についてなど、時代や業種が違えども活用できる大変興味深い経営論を紹介しながら、自身の体験や経験論も交えつつ「学びを行動に移すこと」の大切さについて講義してくださった。

講義「産業の移り変わりや事業の攻め方」(自由民主党 衆議院議員 野田 聖子氏)

多忙の中、第一期に引き続き第二期のBBCAにも出席してくださった野田 聖子氏からは今回、日本の人口推移や年齢構成から考察される、産業の移り変わりや事業の攻め方について講義をいただいた。

野田聖子

鎌倉時代から明治維新まで日本の人口は微増程度だったが、明治維新後、開国政策によって西洋の医療・文化が入ってきたことや、明治時代の軍隊強化などによって日本の人口は急激に増加する。

結果、明治維新前後に3330万人程度だった日本国民は、終戦前に7199万人にまで増加、その後も人口は増加し、2008年にピークである12808万人にまで増加している。

しかし、ご存じのように少子化が長らく叫ばれている日本は次第に人口減へと舵を向け、2008年以降は生まれる人よりも亡くなる人が多いという人口減少が続いている。
このまま続くと2030年には11662万人、そして2100年には4959万人と、明治維新の頃と変わらない人口にまで戻ると予測されており、我々は子ども、孫の世代に向けて少しでも良いものを残していくような心掛けが必要だと話す。

経済は個人消費:投資:公共事業が6:2:2である中、人口減は個人消費の減少に直結するためますます産業の活性化は難しくなってくる。

さらに、明治維新の頃は若者が中心で高齢者は6%程度と言われているが、2100年にやってくる少子化時代は40%以上が高齢者と、人口構造も大きく変わっていると想定されるという。

そんな中で美容業界が生き残るためには何が必要か
野田氏は中心となる販売層の変化など時代の変化を的確に察知すること、さらに国内だけではなくアジアなど海外に目を向けサービスを柔軟に対応させる努力も必要だと話す。

さらにコンプライアンス以上に経営者や従業員の考え方や生き方と重視する企業倫理についてや、COOLJAPANへのアプローチについてなど、大変有意義で今後の事業戦略に大いに役立つ様々な情報について詳細に話をしてくださった。

雇用の多様化や人口構成が大きく変わっていく中で、我々は日本だけではなく世界に目を向けて、専門的でグローバルな技術をもっとアピールする必要がある。
そのためにもBBCA等の団体が旗振り役となり、美容業界全体でタッグを組み業界発展に率先して貢献していただければと熱いエールをいただいた。

 

講義に関連して参加者から質問があり、野田氏は以下の通り回答している。

Q:九州地方でエステ業を営んでいるが、地方は首都圏と比較すると所得が高くないため、売上的には厳しいところもある。
地方でのエステや美容業はどうすれば生き残れるのだろうか。

A:あくまで一案ですが、女性がキレイになりたいと思うような環境を作るのはどうでしょうか。
つまり女性を積極的に雇用するということです。
例えば自宅にいるよりも働いているほうが洋服を買ったりメイクをしたりヘアサロンに行ったり、外面を気にするようになりますね?
女性を雇用することで美の活性化に繋がるのではないかと思います。
またエステ・美容という面で訴求するよりも、まずは楽しい企画やキャンペーンを実施してみるのもよいかもしれませんね。

Q:野田先生はいつも美しくいらっしゃいますが、日々健康や美容のために心掛けていらっしゃることはありますか。

A:実はそれほどないのですが…。
ただ、高齢出産をしたためにホルモン療法は続けています。
あまり美容やエステの業界では注目されてないような気がしますが、女性ホルモンは女性の一生に大きく関係しており、初潮、結婚、出産、更年期など、全てに女性ホルモンが関連しています。
このバランスがしっかりしていれば、健康であることはもちろん、美容面においてもプラスになるのです。
私自身もホルモン療法でその必要性を実感しているので、今後はこの分野にも力を入れていきたいと考えています。

堀部玄

Q:まつげエクステンションの事業を経営している者です。
野田先生のお話にあったように海外進出に興味を持っているのですが、ノウハウや知識がありません。
まずはどこで何をすればいいのかなど、具体的に知る方法はありますか。

A:中小企業が海外で取引をしたい際には一般的にはジェトロ(日本貿易振興機構)が窓口になりますが、製造業等を中心としているため、美容業などサービス産業に関しては具体的な方法がまだ確立していません。
もしエステやまつげエクステンションという分野で海外進出を考えているのであればクールジャパン機構を活用する手もあります。
クールジャパン機構は、日本にある魅力的な産業の海外進出を支援しており、事業や業種にあわせた方法で進出のサポートをしてくれます。
まずは業界でネットワークを作り、ノウハウをシェアし一定レベルの技術力を共有しあった上で、業界全体として海外進出を行うという方法もあるのかもしれません。

奥村優之

Q:エステサロンを経営しています。
今後人口減になるというお話でしたが、まさにエステティシャンの採用に悩んでおり、募集をかけてもなかなか人が集まりません。
何か良い方法はありますでしょうか。

A:人手不足は、自衛隊も郵便局も政界もすべてで起こっています
つまり、そもそも日本国内の働く人口が減っているためで、業界が原因というわけではありません。
女性の雇用を後押しする施策も始まっていますが、それだけではカバーすることができません。
人手不足を解消するためには、日本人の働き方の改革が必要です。
正社員とそれ以外の雇用者の待遇の見直し、海外労働者の活用、賃金アップなど労働条件の改善などが該当します。
とはいうものの、美容業界は相応の技術力や経験が必要ですので、そう簡単に海外労働者を雇用するわけにはいかないでしょう。
日本人による安全で安心できるサービスを提供し続けるために、魅力的な技術、職場、そして雇用条件を作りだす必要があるかもしれません。

野田氏と美容業界に精通した経営陣らによる意見交換の後に、佐藤尊徳氏が締めの言葉として「もっと声を挙げて、外に出ていく必要がある」という点について改めて強く語った。

日本ではルール=「守るもの」という考えが一般的だが、海外ではルール=「変わるもの」という意識が強い。
もし法律はそう簡単に変えられないというのであれば、その他の方法で規制を緩める方法だってある。

その一つの例が国家戦略特区だ。例えば京都の企業には、iPS細胞ビジネス活性化のために、細胞生産に関する規制緩和を認可した。神奈川県などでは、待機児童解消のために、保育士資格試験を年2回に増やす規制緩和を実施している。

日本には様々な法律やルールがあるが、国で全てを把握することは難しい。中には70年前の条約内容をもとにサービス導入を認可しなかったという事例もある。だからこそ、全体利益に繋がるのであれば、業界や地域からもっともっと声をあげることが大切だと同氏は話す。

サービスの緩和、海外進出など美容業界全体の更なる発展のためにも、勉強会での意見交換にとどまらず、他業界や国に対してもっともっと外に発信するようにと力強く訴えた。

懇親会では、野田氏や佐藤尊徳氏も参加し今後の規制緩和や海外進出について、ざっくばらんな形で様々な意見交換が行われた。
参加者の中には、すでに中国の美容施設の視察に行っているメンバーもおり、海外の美容業界の現状についてなどリアルな情報を交換するなど充実の勉強会となった。

 

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