勉強会報告

【第二期】第3回勉強会 2017年6月12日【井内 摂男氏 ・森川 亮氏】

クールジャパンとしての美容業界の可能性

井内 摂男

内閣府 知的財産戦略推進事務局長 井内 摂男氏

第一講義では、内閣府 知的財産戦略推進事務局長の井内摂男氏からクールジャパン戦略について、また美容業界がインバウンドへ与えている影響やその評価について、さらに美容業界が海外展開を行う際の可能性についてなど講義をいただいた。

井内氏は東大法学部卒業後、通産省(現経済産業省)に入省し、2014年に中部経済産業局長に就任、その後2016年から現職として活躍をされている。
同氏が現在推進しているクールジャパン戦略は、テクノロジー、日本の生活様式、アニメやキャラクターや食べ物といった日本固有の文化・魅力を海外に発信することで、国内消費を効果的に展開し日本の経済成長へと繋げるためのブランド戦略だ。

知的財産基本法に基づき2003年に設置され、政府全体の知的財産推進計画の作成や重要施策の企画・推進・調整を行っている。

官民連携によるクールジャパン全体を推進する事務局を担う内閣府知的財産推進事務局では、知的財産推進計画が毎年策定されるが、2017年は特にビックデータ・人工知能利用時のガイドライン制定などの「イノベーション」、地方生産物や特産品を活性化する「地方創生」、さらにコンテンツをもって文化交流や海外展開する「文化遺産」分野へ特に注力をし、異業種連携によるビジネスプロジェクトの開催、国内外でのイベント・ビジネスセミナー実施、さらに地元との情報交換等を通して同プロジェクトを推進している。

井内 摂男

そのような中で特に美容業界については、「モノからコト消費に変化している」と井内氏は話す。
2015年のデータでは、海外からの観光客が日本で体験してみたいことの中に、世界遺産・名所旧跡の観光(25.1%)を上回って化粧品ショップで買い物(36.2%)、美容サロンへ行く(26.5%)がランクインしている他、美容クリニックへ行く(8.0%)という回答もあったという。

中でもASEAN各国の女性は日本と同等もしくはそれ以上にサロン利用率が高く、技術力や衛生面、料金面などの面で高い評価を得ている美容業界は、今後さらにコンテンツ提携等によって発展できるのではないかという点について、ビジネスモデルの具体例や販促ツールについて、また海外進出をサポートするクールジャパン機構や中小企業庁、ジェトロ、日本制作金融公庫などによる各種支援についてなど、具体的な方法も含めて様々な確度から提案をしてくださった。

動画でコミュニケーションし行動し物を買う時代

C Channel株式会社 代表取締役 森川 亮

第二講義では、女性向け動画コンテンツ配信などを手掛けるC Channel株式会社代表取締役の森川亮氏から、インターネットの変遷による動画の台頭と、ミレニアム世代の動画によるコミュニケーションの実態や同社が提供する動画サービスや今後の展開について等を詳しく話をしてくださった。

様々なSNSが登場して身近な人の情報に価値が出てきた今、ミレニアム世代は炎上や極度な拡散を防ぐためにもクローズドでの情報発信をメインにしている。そんな中で生まれたのがLINEサービスだが、現在トレンドはさらに進み、文字ではなく写真や動画でコミュニケーションを取ることが主流になってきている。

森川氏が動画に着目したのは、昨今の若者のトレンドの変化と併せて自身の過去の経験も関係している。
同氏が大学卒業後に就職した日本テレビでは、新規事業として国際放送を手掛けようと試みたが、当時は著作権の問題などもあり、結果的には一部の野球試合とニュースしか放送することができなかったという。

そんな失敗の経験もあり改めて日本から世界規模の情報を発信したいという想いを持ったこととあわせて、このところアジアの中で日本の価値が低下している点も同氏は憂慮しており、様々な観点から日本の良さを伝えたいと思い、2年前にC channel株式会社を創立した。

一般的な概念として、映像は様々な職人が携わりひとつの作品を作り上げるため、設立当初は同業の方々から「難しいのでは」と言われることも多かったという。
そこで森川氏は、ファッション業界で成功しているSPAモデルを導入し、一気通貫で撮影、編集、配信できる仕組みを構築する。

同社ではこの職業をクリッパーと言い、雑誌やテレビで活躍するモデルや芸能人ではなく、ヘアアレンジ、メイク、料理などの特定の分野で活躍する専門家を中心にフォロアーやファンを多数持つインフルエンサーと呼ばれる女性が多数在籍している。
このクリッパーによるハウツー動画を配信し始めたところ、ミレニアム世代の女性の指示を大きく集め、爆発的にPCV数が伸びていったという。

同社では現在、インストリーム広告、バナー広告、ネイティブ動画アドなどによって収益化している他、昨年から動画コマースサービスをはじめ、動画ならではの良さを活用し自社メディアとSNS経由で化粧品や洋服などの販売を行っている。

さらに中国をはじめとする海外展開も積極的に行い各地で女性向け動画メディアとして認知度を上げており、各国・各地域のインフルエンサーと共にオリジナル商品の企画なども手掛けているという。

同氏の講演に対して、本研究会特別顧問であり、20年以上の出版社経験を活かしてWebマガジン等を提供している佐藤尊徳氏が、同じメディア事業に携わる事業者として今後の日本のメディアの向かう方向について質問をした。

森川氏は、「時代にあわせてメディアは常に変化する」「情報は、少ないともっと欲しいと思うが、逆に多いと最適なものを選んでほしいと思うもの」という前置きをした上で、今後はAIが発達することで今以上にリコメンド機能が進化し、洗濯機がその日の天気に合わせた洗濯物を提案してくれたり、冷蔵庫が食材や最近の調理傾向をもとに最適なメニューを提案してくれるなど、よりカスタマイズ化されて、街も空間もすべてがメディアになる日が来るだろう、と回答した。

また、本研究会事務局長の佐々木からは、エステサロンやネイルサロンが動画を活用して集客する方法について質問した。森川氏からは、利用単価が高いエステの場合、リピート率の維持がポイントではないかという推測のもと、明日から活用できそうな具体的な活用方法をいくつか提示してくださった。

PAGE TOP